ゴジラ60周年ロケ地巡り～『ゴジラvsキングギドラ』④（新宿新都心・熱海）

あけましておめでとうございます。さて、『ゴジラvsキングギドラ』のロケ地巡りもいよいよクライマックスです。ラストは、新宿新都心を中心にご紹介します。

◆新宿三井ビルディング前
『ゴジラvsキングギドラ』（1991）より

まずは謎の飛行物体が新宿都庁上空に飛来する冒頭シーン。以前ご紹介した、'84ゴジラを見上げたり、『モスラ3』でキングギドラの襲撃から逃げる人々が階段を下りきったところからのアングルです。それにしても街路樹の成長が著しいですね。実際は、もう少し都庁に接近して撮っているのかもしれませんが…。【A】

『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』（2015）より

これもほぼ同じ場所からの撮影と思われますが、逆に後ろに下がったところから狙っているようです。こちらの方が『ゴジラvsキングギドラ』本編に近かったりして(^_^;)

◆新宿ワシントンホテル本館
『ゴジラvsキングギドラ』（1991）より

新堂会長もろとも帝洋コンツェルンの本社ビル（後述）を破壊したゴジラが、都庁へ向かうシーンです。1984年版『ゴジラ』にも登場した「新宿ワシントンホテル本館」後方をゴジラが横切ります。

いろいろ頑張ってはみたのですが、現実はなかなか厳しいものがありました。【B】

◆新宿モノリス



続いて、ゴジラが破壊しているビルは「新宿モノリス」です。【C】

竣工は映画公開前年の1990年6月です。

◆京王プラザホテル前

避難を呼びかける自衛隊のジープ。撮影場所は、「京王プラザホテル」前の議事堂通りの路上です。ちなみに、関西訛りのアナウンスは、大森一樹監督なのだそうです。【D】


その後、レポーター（演：時任三郎）とカメラマン（演：森末慎二）がホテルに入っていきますが、手前の木の成長が激しいですね。というか手入れされていない感じも…。

本編同様にホテルが見える位置に移動しました。ちなみにここは……

『宇宙怪獣ガメラ』（1980）より

『宇宙怪獣ガメラ』で圭一少年がガメラと遭遇したシーンの撮影場所でもあります。柵が植え込みに変わっています。

ガメラの初登場カットも、切り返しでちゃんと同じ場所から撮影されています。右手の「新宿三井ビルディング」の屋上設備は、合成時にカットされています。

先のカットを見下ろすとこのアングルになります。こちら側も大きく変わっています。現在、左手奥に見える建物は、1995年に竣工した「新宿アイランドタワー」です。

◆東京都庁舎
『ゴジラvsキングギドラ』（1991）より

閑話休題。都庁に迫るゴジラ。「東京都庁舎」は丹下健三さんの設計で、1990年12月に竣工。左側が「第一本庁舎」（243m）、右側が「第二本庁舎」（163m）です。いずれも100mのゴジラを凌ぐ高さとなっており、118.5mのシン・ゴジラでもかないません。

ゴジラが議事堂通りを踏み抜いたのはこの辺り。

同じ場所を都庁の展望室から見下ろしてみました。ここで矢印の階段に注目です。

『3人の宇宙刑事 ギャバン シャリバン シャイダー大集合!!』（1985）より
その階段がこちら。『宇宙刑事シャイダー』の最終回として放送されたスペシャル番組で、ギャバン（演：大葉健二）、シャリバン（演：渡洋史）、シャイダー（演：円谷浩）が再会した場所です。【E】

そのまま近寄ると柱で何も見えないため、少し左へ移動してみました。現在は、目の前に「東京都議会議事堂」が建っており、風景が完全に様変わりしています。

その切り返しも、第二本庁舎が建ったことで印象が異なりますが、左手奥のマンションは健在です。


3人の宇宙刑事に変身を促す“天の声”。今なら声は届きませんね(^_^)


というわけで、蒸着！


赤射！！

焼結！！！

『ゴジラvsキングギドラ』（1991）より

テンションが上がったところで、再び閑話休題。「東京都議会議事堂」を破壊するゴジラ。本編は川北紘一特技監督らしい内引きカット（ミニチュアセット内からの撮影）で、とても臨場感があります。

『宇宙怪獣ガメラ』（1980）より

『宇宙怪獣ガメラ』でペットショップの車が空を飛んだのも、議事堂前のこの付近でした。本作の湯浅憲明監督は、同時期の『ウルトラマン80』（1980）で川北監督が特撮を担当したすべての回（9、10、13、14話）の本編監督を務めています。

黄色い発光体となって空を飛ぶ車。『宇宙からのメッセージ』（1978）をはじめ、先の宇宙刑事シリーズなど1980年代の東映特撮でお馴染みの東通ecgシステムによる大胆なビデオ合成に注目です。本編で背後に見える建物は「KDDIビル」（映画公開当時は「国際通信センタービル」）で、現在は先の「新宿モノリス」と右手の「新宿NSビル」（1982年竣工）の陰に隠れてしまっています。【F】

『ゴジラvsキングギドラ』（1991）より

上空からメカキングギドラの攻撃を受けるゴジラ。都庁の展望室からの風景と比較してみました。ゴジラは「新宿NSビル」の前に鎮座しています。【G】

『3人の宇宙刑事 ギャバン シャリバン シャイダー大集合!!』（1985）より

番組冒頭でギャバン隊長がエレベーターで上っていたビルも「新宿NSビル」です。ゴジラが鎮座していたのはちょうどこの場所です。

今となってはこのような風景を望むことはできません。

◆新宿中央公園

新宿中央公園に着地するメカキングギドラ。手前に歩道橋が見えますが、公園の周辺に実在する同じような形の歩道橋は2か所あります。

これは新宿中央公園の西側を南北に走る十二社通りの、熊野神社のすぐそばにある歩道橋です。本編と比較すると、ちょっと北寄りです。【H】

こちらは、同じく十二社通りを南へ350mほど進んだところにあるもう一つの歩道橋です。アングル的にはこちらの方が本編に近いですね。【I】

ちなみに、この歩道橋を渡ったところにある公園は……

『宇宙怪獣ガメラ』（1980）より

キララ（中央/演：マッハ文朱）たち平和星M88星人が変身し、念力でガメラを呼び寄せた場所です。【J】


宇宙海賊の手下・ギルゲと格闘するキララ。本編の遊具には「夢のかけ橋」という札が付いていますが、公園内の遊具はすっかり変わってしまっており、まるで当時の面影はありません。樹々が成長して写真ではよくわかりませんが、方角だけは合っているはずです。

スタントマンを大胆に使ったこちらのカット。これも現地写真ではわかりにくいのですが、奥にあるマンション群は一致しています。

先ほどの歩道橋から見たマンション群です。

ラストシーンもすぐ近くで撮影されているようですが、ここも現在は景観がすっかり変わっています。なお、右端の「京王プラザホテル」の南館は、映画公開（1980年3月20日）と同年の11月に開業していますが、撮影時点ではまだ工事中だったようです。

『大戦隊ゴーグルファイブ』第1話エンディング（1982）より

2年後の『大戦隊ゴーグルファイブ』のエンディングに、ほぼ同アングルのカットがありました。撮影場所は「公園小橋」。以前ご紹介しましたが、1984年版『ゴジラ』で田中健と沢口靖子が歩いていた所です。【K】

本編にクレジットされている美術の大澤哲二さんは、『ゴジラvsキングギドラ』でも特撮美術を担当されています。

『ゴジラvsキングギドラ』（1991）より

話が戻ったところで、「公園小橋」周辺からは、ゴジラが破壊した都庁の「第二本庁舎」（右手前）を仰ぎ見ることができます。本作のクライマックスは、メカキングギドラ搭乗者・エミーの目線でゴジラを捉えているカットが多く、同ポジを狙いにくいのがちょっと残念です。

続いて、メカキングギドラの攻撃を受けて「京王プラザホテル」に倒れ込むゴジラ。1984年版では左側の本館がゴジラの放射熱線でぶち抜かれましたが、本作では右側の南館がやられました。

こちらは、ゴジラの反撃で新宿中央公園に墜落するメカキングギドラ。角筈区民センター前交差点付近からのアングルが近いように思われます。ただ、本編の手前にあるような歩道橋は、都庁に向かって延びる南通りには実在しません。【L】

◆GSKビル

こちらは新堂靖明（演：土屋嘉男）が会長を務める帝洋コンツェルン。DVDのオーディオコメンタリーによると、内部も含めて某ゼネコンのビルで撮影したとのことですが、ゴジラに壊されるということで外観には手が加えられたそうです。

新堂会長の奥に都庁や先の「KDDIビル」が見えます。というわけで、都庁の展望室から逆に見てみると……

千駄ヶ谷方面にそれらしき建物がありました。

JR山手線から撮影。

イギリスに本社を置く製薬会社の日本法人「グラクソ・スミスクライン株式会社」（GSK）の本社ビルです。ネット情報によると、映画公開直前の1991年11月28日に竣工とありました。現在はゼネコン系ではないのですが、完成間近のビルを借りて撮影したと考えられます。

ミニチュアもそっくりです。

（2013年4月28日／2014年9月19日／2015年3月5日・8月6日撮影／
一部2016年2月9日・5月19日撮影・追記）

◆MOA美術館

ところ変わって熱海へ。23世紀のタイムマシン「MOTHER」の内部は「MOA美術館」のエントランスから本館へ向かうエスカレーターで撮影されています。

奥に見えるのは展示会やコンサートが開催される「円形ホール」です。何も合成せずとも近未来の香りがプンプンします。Webサイトの施設案内では、「円形のスペースはまるでUFOのなかを思わせる不思議な空間」と紹介されていました。なお、「MOA美術館」は2016年3月7日から2017年2月まで、改修工事のため休館となるそうです。聖地巡礼はお早めに。

（2003年4月29日撮影）

さて、最後にオマケです。1991年の夏頃、朝日新聞に掲載された広告です。


こちらは特別前売券と、私の地元・大阪府高槻市にあった高槻セントラルの特別割引券。



阪急電車のラガールカード。残念ながら全部は揃えられませんでした…。

　
これは、映画公開前に大阪のよみうりテレビが「ゴジラ復活作戦第2号」という番組の特別イベントとして企画した試写会の招待はがきです。「ゴジラ復活作戦」については、先日刊行された『ゴジラvsビオランテ コンプリテーション』（ホビージャパン）のコラムにて詳しく紹介されています。

試写会のプログラム（左）と劇場パンフレット（右）。

公開直前の1991年12月13日付毎日新聞の広告特集。「大森一樹首謀者説有力」とあるのがユニークです。「日本にふたたびゴジラを上陸させ、宿敵キングギドラを20年ぶりに復活させた首謀者」とのこと。

そして、関連本いろいろ。左上から……

・『スクリーン特編版 東宝怪獣グラフティー 「ゴジラvsキングギドラ」完成記念』（近代映画社、1991年10月31日発行）
・『スクリーン特編版 ゴジラvsキングギドラ特集号』（近代映画社、1991年12月15日発行）
・『ENCYCLOPEDIA OF GODZILLA 最新ゴジラ大百科』（学習研究社、1991年12月1日発行）
・『講談社ヒットブックス⑳ ゴジラvsキングギドラ 怪獣大全集』（講談社、1991年12月5日第1刷）
・『東宝SF特撮映画シリーズVOL.6 ゴジラvsキングギドラ』（東宝出版事業室、1992年1月15日初版）
・『宇宙船文庫 ゴジラvsキングギドラ』（朝日ソノラマ、1991年11月30日初版）
・『THE ART OF GODZILLA』（ワニブックス、1991年12月10日初版）