ゴジラ60周年ロケ地巡り~『オール怪獣大進撃』(川崎)
今回ご紹介するのは、1969年12月20日に公開されたシリーズ第10作『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』です。
「東宝チャンピオンまつり」の一篇として製作されるようになった初めての作品で、監督は前作『怪獣総進撃』と同じ本多猪四郎監督です。前回の重厚な東宝SF怪獣路線の色合いとは相反して、本作は、いじめられっ子の少年が夢の中に登場するミニラとの交流を通じて成長していく様を描いた小品となっています。
非常に厳しい予算で製作され、前作同様に多数の怪獣が登場するものの、その多くは過去作品の映像を流用したものとなっています。のっけから『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』(1966)や『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(1967)の映像が使われ、見間違えたのかと錯覚してしまうほどです。しかし、そこは本多監督。低予算とはいえ手を抜くことはなく、公害やカギッ子といった当時の世相を背景に、少年向けのファンタジー映画としてうまくまとめています。改めて見直すとよくできた作品だと思います。
また私事で恐縮なのですが、生まれて初めて観たゴジラ映画がこの作品で、確か小学校3年生の頃(1983年頃)、地元・大阪の茨木市民会館で開催されていた子ども映画大会で締めに上映されていました。特撮・怪獣物にハマる少し前だったので、ゴジラ映画ということは意識せず、純粋に主人公の一郎少年が知恵と勇気を振り絞って銀行強盗犯を撃退するというストーリーを楽しんだ記憶があります。子どもにとっては、低予算だからどうとかは関係ない話ですね。
さて、前置きが長くなりましたが、ロケ地の紹介に移ります。実は、本作のロケ地に関してはまだ実地調査が済んでいないことを、あらかじめお断りしておかなければなりません。関西に住む身としては、観光地や出張で訪れる都内・地方の主要都市以外は、なかなか訪れることができないのです…。
◆川崎市川崎区浜町周辺
『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』(1969)より
まずは映画の冒頭、一郎少年とガールフレンドのサチ子が歩く歩道橋。そして、赤い車がミニラの鳴き声のようなブレーキ音を響かせて交差点を曲がるシーンです。
もはや、私のロケ地探訪のバイブルとなりつつある、野村宏平著『ゴジラと東京 怪獣映画でたどる昭和の都市風景』によると、ロケ地は川崎市川崎区の浜町歩道橋とのこと。
Googleマップで確認すると、確かに歩道橋の形が一致します。産業道路と並行して走る貨物線は、現在高架になっています。
こちらは、先の歩道橋のシーンの少し前、主題歌『怪獣マーチ』に乗せてトラックがひっきりなしに走るカットです。映画のロケは、一つの場所で複数のカットをまとめて撮ることが多いので、浜町歩道橋の近辺をGoogleマップで隈なく調べてみました。
すると読み通り、浜町の交差点から県道101号線を南へ500mほど下ったところにある高架橋が、本編と一致しました。
ところが、それに続いて少年たちが高架橋を渡るこのカットでは、橋の欄干の形状が異なります。こちらは別の場所で撮影されているようです。
◆JR貨物川崎車輌所周辺
一郎とサチ子が貨物線の線路沿いを歩くシーンです。これだけではロケ地の特定が難しかったのですが……
このカットがヒントになりました。一郎が拾った真空管をガキ大将一味に取り上げられる一連のシーンで、一人の少年の背後に「日本ゼオン」のタンクが見えます。「日本ゼオン」のタンクといえば……
『ウルトラマン』第11話「宇宙から来た暴れん坊」(1966)より
『ウルトラマン』でホシノ少年(演:津沢彰秀)たちが、不思議な石を手にするシーンに出てきます。こちらのロケ地は、「ウルトラシリーズロケ地探訪」さんなどによると、現在のJR貨物川崎車輌所周辺とのことですが、『オール怪獣大進撃』の風景ととてもよく似ています。余談ですが、『オール怪獣大進撃』と『ウルトラマン』の劇伴作曲はいずれも宮内國郎さんなので、これらもとてもよく似ています。
なお、「日本ゼオン川崎工場」のタンクは、Googleマップで見る限りでは、残念ながら現在はなくなっているようです。
ロケ地特定のもう一つの手掛かりは、一郎の父親(演:佐原健二)が運転するディーゼル機関車です。そのカラーリングから国鉄でないことは明らかで、「日本ゼオン川崎工場」付近にある貨物線で該当するのは、第三セクターの「神奈川臨海鉄道」です。現在の機関車は、青いカラーリングになっているようですが、Googleで画像検索すると、本編と同じ赤いカラーリングの機関車の写真がわんさか出てきます。ちなみに、本編で使用された「DD451」は、1980年代に廃車となったそうです。
以上のことから、Googleマップで周辺検索してみると、本編と一致すると思われる場所が見つかりました。ラスト付近で、ペンキ屋がいたずらした一郎を追いかけるシーンや、一郎の父親がペンキ屋に誤るシーンは、こちらで撮影されていると思われます↓
最後に、運河沿いを少年たちが歩いていくラストカットです。周辺に該当しそうな場所はいくつかあるのですが、こちらはまだ特定には至っていません。
今回はGoogleマップを使用してのロケ地探訪となりました。自宅に居ながらにしてロケ地探訪ができる便利な時代にはなりましたが、ロケ地探訪はやはり実地調査に限ります。機会があればぜひ現地へ行ってみたいと思います。
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